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安政二年(1855年)創業


小麦を炒ります。燃料は昔からずっと「石炭」。今では石炭の確保が非常に難しいそうです・・・

精魂込められた本物の手造り

 石孫本店に機械はありません。全てが手作業です。原料や麹を運ぶ時も一つ一つ人が担いで運ぶので、何往復も行ったり来たりする光景が150年以上繰り返されています。

 石孫本店を訪れて驚いたことの一つにに、小麦を炒るのに「石炭」を使い続けていることがあります。今や入手することさえ困難な石炭。当然、周辺地域で調達することができないため北海道から取り寄せているそうです。それも、少量での購入はできないために「一貨車単位」での購入になっているそうです。それでも石炭にこだわり続けているのです。

 麹を室に入れた後は囲炉裏の炭火で室内を暖めるのですが、温度調整は天井の小窓の開閉のみで行います。だから、夜中の3時でも人が見守りながら石室の温度を一定に保つように世話をしているそうです。

 その後、麹は高さ2メートルを越す木桶に運ばれます。蔵付酵母や四季の気候の助けが充分生かされるように、職人が櫂棒(かいぼう)で攪拌(かくはん)を続け熟成をサポートします。この作業を一年余り続けてようやく醤油が出来上がります。


丸大豆天然醸造
百寿
100mlサイズ



再仕込天然醸造
みそたまり
100mlサイズ


100ml醤油



石でできた室(むろ)の内部。左右に積まれているのが麹蓋(こうじぶた)と呼ばれる木箱で、蒸した大豆と炒った小麦に種麹を混ぜ込んで入れます。4日昼夜つきっきりで室内を30度に保ち麹をつくります。

守ることが大切な仕事

 何故ここまで昔ながらの方法にこだわるのか?

 「昔は道具が壊れると、その場で修理して使い続けて、後世に引き継いでいたんです。この流れが文化であり、伝承であると思うのです。ただ、この流れは一度止めてしまうとその時点で途絶えてしまいます。守ることが私達の大切な仕事の一つだと思っています。」と石川裕子社長は優しい笑顔で答えてくれました。

 ただ、「昔はこの製造手法を卑屈に感じていた。」とも話してくださいました。秋田の豪雪地帯でもある湯沢市は仕込み時期の冬には2階の窓から出入りするくらいに雪が降り積もるそうです。だから、1日の仕事の半分は雪下ろしの作業になるそうです。そんな環境下で手作業で行ったり来たりしている姿を見ると、「人が担いで運ぶのではなくて、機械の力で送れたらいいね。早く機械を導入したいねって、よく話していたんですよ。」とのこと。

 ところがある日、雑誌の取材を受けたことをきっかけに考えが変わります。「このような光景は本当に貴重。絶対に残すべきだ。」そう話すライターさんとカメラマンさん。「このやり取りを境に、自分たちの守る位置を定めることができました。今では守ることが大切な仕事の一つになっているんです。」


仕込んで2ヶ月は、朝晩2回、柄杓で右奥の小桶部分から塩水を汲み上げて諸味の表面にまんべんなく打ち続けます。


熟成させた諸味を布袋に入れ、漆塗りの木槽(きぶね)で搾ります。赤く透き通った生醤油がしたたります。

胸を張っての「手造り」

 二代目孫左エ門が、明治16年(1883年)から、大正5年(1916年)までに建てた6つの蔵はすべて平成10年(1998年)に文化庁指定登録有形文化財として登録されています。

 蔵の中には人の背よりも深い、大きな木樽が収められています。蔵の入り口から後で入れることは不可能なので、初めから蔵の中で組み立てたものと言いますから、古いものだと明治の時代から現在まで使い続けていることになります。先述のとおり、醤油も味噌も、蔵の中に鎮座する30石もの巨大な木樽がいっぱいになるまで、蔵人が担いで何度も何度も往復します。

 「傍目には効率の悪い作業に見えるかもしれませんが、私たちの造り出す製品は「生き物」であると考えております。「生き物」は最先端の機械をもってしても制御できないことがあります。」蔵人が五感を研ぎ澄まし、惜しみなく手をかけて造り出す…。だから、石孫本店の醤油は胸を張って「手造り」と言えるのです。


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