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昭和六年(1931年)創業


片上裕之さん


麹づくり。「蒸した大豆」と「炒った小麦」に種麹を混ぜて3日間。

醤油造りは減点法

 「醤油造りは減点法なんです。」と片上裕之さんは語り始めてくれました。「原料の時点で100点なんです。奈良県産の大豆を使っているのですが、蒸した直後は本当に良い香りがするんですよ!その蒸した大豆から麹をつくって熟成させる工程を経るのですが、一度減点になると加点することはできません。当たり前の作業を繰り返してやっと点数維持なんです。」

 「最も神経を使うのが麹作りです。気温や湿度、豆の違いや作る醤油の種類によって麹作りはいつも同じようには進まず、毎回手を抜けません。麹室の隣の部屋で時々仮眠しながら2日2晩を過ごしますが、うまく麹ができた時はホッとします。素材の良さを精一杯引き出してやれるように、いつも真剣勝負です。」

 このように、片上さんと話をしていると「原料・素材」というキーワードがよく出てきます。

 一般的な醤油は脱脂加工大豆という大豆から油を取り除いたものを使います。丸いままの「丸大豆」と比較してメリット・デメリットはあり、機能的な理由はもちろんですが、情緒的・感情的な理由からも丸大豆を使用しているということです。
 「お客様の口に直接入る食品として、原料は自然なものであるべき。」お客様に「この豆で造っています」とお見せできるもので造りたいという、隠し事なしの醤油造りをしたいという意志の現れというわけです。


天然醸造醤油
100mlサイズ



淡口天然醸造醤油
100mlサイズ



重ね仕込み醤油
100mlサイズ



自家用たまり醤油
100mlサイズ


100ml醤油

木桶は容量が異なっても深さは大体同じにつくられています。これは木桶の容量が変わっても空気に触れている面積との比率が変わらないことを意味しています。発酵容器としての容量と空気に触れる面積比率を導き出した先人の知恵です。


木桶に残っている微生物は、前年度に醤油をつくった微生物です。蔵の環境、周囲の自然環境に適応した者たちです。蔵人が毎年丹念に諸味の世話をして、良い諸味をつくる微生物を残してはじめて、次の年も良い醤油ができるのです。

奈良県産の大豆

 奈良県産の大豆の生産量は約50トン。そのうち30トンが契約栽培で納入先が決まっているのですが、残りの20トンの30%〜50%が片上醤油の原料となります。

 「毎年、原料確保が大変です。生産量が限られているので、自分達だけが多くを使うわけにもいかないですしね!」国産原料の良さを尋ねると、「日本の大豆は元来、食べる目的で作られてきたんです。対して外国の大豆は油を採る目的で作られてきた歴史があります。国産の大豆を蒸したものは、本当に良い香りがするんですよ!」

 一般的に濃口醤油は約16%の塩分のほかに、20%前後のエキスを含んでいます。両方合わせると醤油の実に3分の1が固形分なのです。溶けているものを調べ上げて、試薬を揃えて溶かそうとしても到底溶かしきることは出来ないと言われています。

 溶けないものがなぜ溶けるのか?それは長い発酵期間のうちに、成分や性状の変化、phの降下、アルコール等揮発成分の醸造、これらの変化に伴い、いったん溶けていたものが出てきたり、それこそ紆余曲折の末にやっと溶け込んでいるのです。

 「醤油醸造に携わるものにとって、これは大変なロマンなのです。だから、醤油の希釈は行いません。せっかく磨きあげたものに傷をつけたくないのです。」


熟成された諸味が搾られて醤油となります。


丸大豆しか使えない大豆蒸し器

 先述の「脱脂加工大豆」と「丸大豆」。一般に流通している醤油の8割以上が脱脂加工大豆でつくられていると言われていますが、片上醤油の大豆蒸し機は丸大豆しか使えない構造になっています。

 それは、蒸し器の底にメッシュ状の穴が開けられており、蒸す過程での煮汁を捨てられるようになっているからです。

 「国産大豆は繊細なんです。採れたばかりのものか、収穫後しばらく時間のたったものかでさえ、水に浸す時間や蒸す時間が異なります。」

 大豆の状態によって、その力を最大限に活かす蒸し方は異なってくるわけです。さらに、「蒸した大豆」は「炒った小麦」と混ぜて麹を作り、次に塩水を加えて熟成させます。つまり、「蒸してふやけた大豆」→「麹づくりで乾燥」→「塩水加えてふやけて熟成」となるのですが、「最初のふやけたレベルまでしか熟成時に戻らないと感じています。だからこそ最初の蒸し方が重要なんです。素材の力を最大限引き出せるように真剣勝負ですよ!」


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