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色が薄い?甘くない? ─ 醤油屋が受けるクレームから見えるもの

溜醤油のクレームは「色」についてが多いらしい

クレームはできれば避けたいものです。商品を間違えて届けしてしまった、期日までに届かなかった ――明らかな過失は、すぐに改善するべきなのですが、ただ、味わいに関するクレームもあって、それは、気づかぬうちにメーカーの味づくりに影響を与えているように感じるのです。

2025年の阪神百貨店での木桶イベント、山川醸造の山川晃生さんがこんなことを話していました。「溜醤油についてのクレームって、色についてが多いんですよね」。いつもと比べて、色が濃くないというわけです。「うま味が足りない!」ではなく、「色が濃くない!」というもの。確かに、色の濃淡の方が直感的に分かりやすい。いつもより淡い色だと物足りなさく感じてしまう、そんな感覚は分かる気がします。

似たような話を九州の醤油メーカーからも聞きました。「甘くない」というクレームはあっても、「甘すぎる」というクレームはないというのです。別の醤油メーカーでも、「確かにうちでも甘くないクレームはあっても、甘すぎるクレームはないな…」と。これは九州のどの醤油メーカーに聞いても同様の回答になると思われるくらいに、皆が口をそろえます。

生産者であれば、お客さんによろこんでほしいと思うのは当然で、届いた声にはできるだけ応えたいと思ってしまうもの。このような顧客の声が少しづつ積み重なって、知らず知らずのうちに少しづつ地域の醤油の味わいに反映されていたりして、なんて想像していました。

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