醤油の知識

039|荒櫂(あらがい)

仕込み後、初期は頻繁に諸味の撹拌を行うのですが、この作業を荒櫂(あらがい)といいます。これにより、麹と塩水を良くなじませます。

麹(大豆・小麦)の表面は菌糸と胞子で覆われていて、塩水と合わせただけではすぐに浸透していきません。また、うちの場合、崩壊機(固まっている麹をほぐす機械)がないので出麹の時に人の手で崩しているため、完全に崩れてない状態で塩水と一緒になる場合があるのです。

このような固まりの内部には塩水が届かないため、麹菌やその他の微生物(麹には麹菌以外の微生物も沢山いる)が死滅せず部分的に腐敗したり、異臭の原因になります。なので、仕込み後5日間は入念に撹拌して固まりがあれば手で崩しました。

来年は出麹の時に完全に崩してから仕込もうと思います。

 

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元