職人醤油の蔵元

鷹取醤油

至誠な醤油づくりを目指して

岡山県はまろやかで甘みのある醤油が愛されている土地ですが、この地に「正直な醤油づくり」という言葉がぴったりな蔵があります。蔵の中に入ると若いスタッフが忙しそうに行ったり来たり。活気に満ちた空間が広がっています。

鷹取宏尚社長

強面と穏やかの裏にあるやさしさ

この醤油蔵の社長は鷹取宏尚さん。一見すると強面で、話していても底知れぬ威圧感を感じます。ただ、一緒に蔵の周りを歩いていると、すれ違う全ての方に「こんにちわぁ」と声をかけていて、その表情は驚く程穏やか。しかも、声が大きいからよく響くのです。その鷹取さんにこれまでの経緯を伺うと、もともとは醤油屋を継ぐ気はなかったといいます。ここまではよく耳にするエピソードなのですが、家業を継ごうと決めたきっかけは少し変わっています。

そもそもどうして醤油屋に?

鷹取さん27歳、信用金庫の営業マンをしていたある日、知り合いの醤油屋さんが預金をしてくれるということで連絡がありました。子供のころから知っている方だったので、今月も営業目標が達成できそうだと笑顔で訪問すると、いつもと様子が違ったそうです。そして、「家業はどうするんだ?」と訪ねられ、答えに躊躇していると、「お前みたいなのがいるから日本中の醤油屋が廃れるんだ」と怒鳴られたといいます。

「あれは衝撃的だったなぁ」と鷹取社長。家業の、そして親父の何を見て育ってきたのだということを突きつけられた気分だったそうです。そして、ちょうど同じ時期、休日に配達を手伝っていると、得意先の90歳のおばあちゃんにこう言われたそうです。「私はねぇ、ここの醤油しか使っていないんだよ」と。自分たちのつくっているものが必要とされていることを実感したといいます。

業務用途で醤油を使う場合は一升瓶(1.8リットル)や一斗(18リットル)の単位で配達もしています。

自分の給料が払えない

家業に戻ることを決意して、まず帳面を開いたそうです。信用金庫で働いていた経験から決算書を読むことはお手の物。ただ、何かがおかしい。売上から経費を引いていくと、どう計算しても自分の給料が払えない。しかも、当時取り扱っていた商品は数種類ほどで、他社とどう差別化をしたらよいかも分からない状況だったそうです。

自分で決めて戻ってきたからには何が何でも逃げ出すわけにはいかないと、愛車を売ってやりくりをしていたそうです。すると、友人から一本の電話がかかってきて、「釜の管理を手伝ってほしい」と依頼をされます。備前焼の職人で、釜番のアルバイトを探していたそうです。備前焼は何日も連続で釜を焚き続けなくてはいけません。深夜に釜の番をしてくれると仮眠が取れて助かるのだという依頼だったそうです。「口にはださないけど、ワシの状況を察しての友人の優しさだったんだよな。それが嬉しくてなぁ・・・」と鷹取社長。

目が覚めた瞬間

アルバイトをはじめて数日たった時、先の醤油屋の社長さんから釜場に電話がかかってきたそうです。「何をやっている!そんな暇があったら醤油を売れ!」ガッチャーンと電話が切れる。「そこで目が覚めたね」と。

鷹取社長。急いで友人の元に行き、「ゴメン。明日から釜の番できなくなった。責任をもって代わりを見つけるから。ほんとゴメン」といい、後輩にアルバイトを代わってもらい、自分は醤油の営業にでかけたそうです。

日中は現場で作業。その後に営業に行くと飲食店が閉店した深夜のタイミングになってしまったそうですが、これがよかったそうです。ライバルはまったく営業していない時間帯だったので、少しずつ売上が伸びてスタッフも増えてきたそうです。

しょうゆとぽん酢の2種類の味は店舗でしか食べられない味。

ディズニーランドを目指したい

2000年頃、醤油のソフトクリームをスタート。地元のメディアが取り上げてくれて、遠方からも訪問者が増えてくるようになりました。すると土日の営業が求められて、気づけば年中無休のようなペースになっていたそうです。

日に日にスタッフに負担がかかっていきます。どうしたものかとスタッフと話し合いをすると、「やりましょう!」ということに。また、ある雨の日のこと。店舗から道を挟んで反対側にある駐車場へ車が止まるとスタッフが傘をもって走り出したのだそうです。「その傘どうしたんだ?」と聞くと、「朝にコンビニでまとめて買っておいたんです」と。

「この光景が本当に嬉しくて確信したんだ。目指すべきは、醤油屋のディズニーランドだと。ディズニーランドの何がすごいかって、スタッフのお客様への接し方だったり、その心構えだと思うんだ。そんな意識をもってお客様に接する醤油屋になりたいと思っているんだ」。と鷹取社長。

至誠一貫

鷹取醤油の事務所の壁にかかっている行動精神。そこの一行目にはこう書かれています。「至誠一貫」。鷹取さんが積み上げてきたものが、若いスタッフに浸透している様子を、この蔵にくる度に感じずにはいられないのです。

まろやかさと甘さの岡山県醤油

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ふしいち 桐
岡山県で広く愛されている甘いタイプの醤油で、鷹取醤油が代々つくり続けてきた味。見た目は淡口と濃口の中間くらいで甘みたっぷりが特徴。まろやかで甘みと旨みのある銘柄。 鷹取醤油が取り扱っている中でもうま味の高い銘柄です。お刺身などのかけ醤油としてお使いください。卵かけご飯などにもお薦めです。

価格 : 450円+税
原材料 : アミノ酸液(国内製造)、脱脂加工大豆(遺伝子組換えでない)、小麦、食塩、砂糖、大豆(遺伝子組換えでない)/甘味料(ステビア、甘草、サッカリンNa)、保存料(パラオキシ安息香酸)

ビンの中ににんにく実物入ってます

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にんにく醤油
にんにくは擦らないというこだわり。摩擦熱で風味が落ちてしまうため、二ヶ月以上じっくり漬け込みます。その素材を刻んだものが瓶の底に潜んでいるのでご対面をお楽しみに。 鶏もも肉をこのにんにく醤油で漬け込んで唐揚げに。塩コショウと共に野菜炒めやチャーハンにも。カレーライスの隠し味としても力を発揮します。

価格 : 450円+税
原材料 : しょうゆ(大豆・小麦含む)(国内製造)、生にんにく(青森県産)/アルコール
この蔵元への直接のお問い合わせ
鷹取醤油
〒705-0012 岡山県備前市香登本887番地
TEL:0869-66-9033  FAX:0869-66-8022
https://takatori-shoyu.co.jp/