醤油の知識

044|秘蔵の酵母(1)

ついに、うちの諸味にも酵母が宿って、発酵し始めました。
と言っても、端っこのほんの一部ですが。
(ぽつぽつ空いた穴は、酵母の出す二酸化炭素が下から抜けてできた穴です。)



発酵の兆し、といった状況と思いますが自分としては少々腑に落ちない。
というか、不安な点が。

今回、まったくまっさらな環境(一度も醤油を仕込んでない建物と桶)で醤油の仕込みを始めたので、必然的に乳酸菌・酵母を空気中から取り込む必要がありました。 それで、酵母が増殖してきたのが上の写真ですが、実際この酵母がどの程度の発酵能力なのか? それは謎です。 

醸造の世界では「蔵ぐせ」という言葉あります。
これはその蔵の特徴、主に香りの部分だと思います。つまり蔵ぐせ=微生物相の違い、良し悪しだと僕は思います。そして、その蔵ぐせという物は同じ環境で作り続ける限り、そうそう矯正できるような物じゃないとも思います。だとしたら、今仕込んでいる諸味はこの2本分だけではなく、来年、再来年、そのずっと先の醤油にも影響を与える、重要な諸味なのです。

当初は自然に取り込んで、それから年を重ねて環境が作り出されるから、初年度は発酵が緩慢でも仕方ない。と考えていました。しかし、考えていくうちに今後を左右するもろみだから、自然に委ねて悪い方向に行くのは避けたい。という思いになりました。

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元