醤油の知識

063|酵母添加

醤油が出来るまでを形態で分けると、
「原料」→「麹」→「諸味」→「醤油」となります。

2年目の麹つくりも終わり、長い「諸味」の時代に入りました。 

さて、この長い諸味の時代に何が起こるか、
簡単に書くと「酵素分解」→「乳酸発酵」→「酵母による発酵(主発酵酵母・熟成酵母)」→「熟成」 という流れです。 

この中で、一番見た目の変化が大きいのが主発酵酵母の発酵期です。 酵素によってデンプンがブドウ糖に分解され、そのブドウ糖を栄養源に乳酸菌が乳酸を生成し、その酸でpHが下がり酵母が増殖できる環境となります。 昨年もそうでしたが、うちではこのタイミングで酵母を添加します。 昨年も使った、昔の蔵から分離した酵母を今年も使う事にしました。昨年の諸味は未だに高いアルコールを維持しているので、これはなかなか優秀な酵母です。 

<酵母培養中>
5月上旬、麹室で2日間かけて培養しました。 これを冷蔵庫で保存しておき、日々諸味のpHをチェックしながら、ちょうどいいタイミングで上澄み液を捨てて、諸味に投入します。 



<添加直後>
左端の水っぽい所が培養液を入れた所です。 



添加した培養液は菌数が少ないと思うので、
いきなり全体に混ぜるのではなく、投入した周辺の狭い範囲で撹拌しました。 



<7日後>
添加して混ぜた中心から左側の範囲が少し浮いてるような感じ、わかるでしょうか? 



ぽつぽつ空いている穴は、酵母が出す二酸化炭素が下から抜ける道です。 



<22日後>
一部が浮きあがってきて、徐々に混ぜる範囲を広げながら最終的に全体を混ぜました。 これは、もう全体が浮きあがって酵母もだいぶ増殖してきた状態です。 

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元