醤油の知識

022|仕込みに使う道具

仕込みに使う道具 「こしき」

今まで麹室や仕込み蔵の改装の記事を書いてきましたが
それと平行して、機械や道具を集める事に奔走していました。

当然の事ですが、仕込みを行なっていなかったので、必要な機械や道具は何一つ無くすべてを揃える必要がありました。

下の写真は大豆を蒸す「こしき」。(中古)



おそらく「こしき」を使って大豆を蒸されている醤油屋さんは無いのでは…

一般的には中・小規模な工場ではNK缶が使われ、大きな工場では連続蒸煮缶が使われているケースが多いと思います。共通しているのは圧力をかけて短時間で処理するということ。高温で短時間であるほど、利用率は高いです。

こしきは無圧で蒸煮時間も長いので、利用率が悪く、色も濃くなります。しかし、うちの工場の構造的な問題や資金的な面で、圧力蒸煮缶は難しくこしきを使うことにしました。

まぁ、開き直って言えば利用率や数値的な面を追い求めると、しっかりとした設備をお持ちのメーカーさんや、組合には到底かなわないので、逆に他とかぶらない独自路線(良くも悪くも)で行く方が面白いのかなと思います。

ただ一つ、不安要素がありました。
それは、他にやっているとこがないので(僕の知る限り)こしきで十分な蒸煮できるのか?ということ。味噌屋さんでは使われているとこが多いようで、使われている業者さんを紹介して頂いて見学に行き、厚かましく蒸煮大豆のサンプルを戴きました。



こしきの下部・中部・上部と3箇所の大豆をサンプリングし、福岡の醤油組合に持って行きN性(大豆の熱変性が不十分な場合、出来た醤油を希釈や加熱した際に濁ること) の有無を調べてもらいました。

結果は、問題なし。

良かったです。
快くサンプリングさせて下さった「ちぎりの里」のみなさん、ありがとうございました。>

このこしきで醤油造り頑張ります。

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元