醤油の知識

098|諸味、変化のタイミング

今年も冬が終わって春から少しずつ夏が近づいているな。
という季節ですね。

まだまだ、仕込みが続くメーカーさんは沢山あると思いますが、うちは少ないので例年11月~1月で終わります。仕込みから数日は毎日撹拌しますが、その後はけっこう放置。月2回くらいです。(2月~4月初旬)

そんな事で、諸味の世話に手が掛からない2月~4月は手前味噌作りの体験。みたいなノリで醤油作りの体験を販売店さんで開催していただいて行脚しています。販売店さんへの挨拶まわり的な意味も大きいのですが…。

3月くらいまではそんなに気にならないのですが、4月になると日によってだいぶ暖かくなってくるので、徐々に諸味も変化してきます。僕の中で一つの目安というかサインがあって、それが写真の灰色の菌。

見た感じグロテスクで気持ち悪く、カビなのか産膜酵母なのか分かりません。ヒダの感じから産膜酵母かなと思っていましたが、以前息を吹きかけたら胞子が舞った気もする(記憶があやふや)ので、そう考えるとカビかな…。

例年3月下旬~4月下旬くらいの間にこれが現れます。
これが出ると、pHが下がってきて酵母の増殖できる環境に近づいてきたなと、夏場の諸味管理に気持ちが切り変わります。



ただ、この菌は諸味の発酵期(5月~8月)にはまったく出ず、いつも酵母発酵が始まる1カ月前位に出現します。発酵期や熟成諸味で表面に見られるのは真っ白な産膜酵母です。

なので、この菌は酵母よりやや高いpHで生育が良く、発酵期や熟成した諸味ではpHが低くて出現しないのでしょう。アルコールに対する耐性の問題かもしれませんが。

他の所でも出るのか分かりませんが、うちでは桜を見ると春を感じるようにこの灰色の菌を見ると春を感じます。

今年もよりいい醤油になるよう、発酵管理がんばります!

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元