醤油のつくり方



① 原料処理
醤油の基本原料は大豆、小麦、塩です。大豆は蒸して、小麦は炒って砕きます。カチカチの原料をほくほくにして、微生物の働きによっておいしさに変化しやすいようにします。
昔は、大豆は「煮る」作業だったそうですが、現代は「蒸す」ことが一般的です。その方が効率的に大豆に含まれるたんぱく質をうま味成分のアミノ酸に分解できるからです。そして、この大豆を蒸す工程は難しいと言われ、蒸しすぎると大豆はべちゃべちゃになってしまい、蒸しが不足すると硬いままに。
NK缶と連続蒸煮缶
その年の大豆の状態と、作業をする日の季節や天候によって微調整が欠かせないそうです。小規模メーカーはNK缶とよばれる大きな圧力釜で蒸すことが多く、大手メーカーも同じ原理ですが連続して圧力をかけつつ蒸すことができる連続蒸煮缶が使われることが多いです。
流通している約80%の醤油は脱脂加工大豆を使っています。これは大豆から油を抜き取り醤油づくり用に加工したものです。稀に、「搾りかすからつくられた醤油」と言う方がいますが、それはちょっと言い過ぎだと感じています。
* さらに詳しく → 醤油の原材料


② 麹づくり
約3日の時間をかけて麹菌を繁殖させて醤油麹をつくります。その目的は麹菌に酵素をつくりだしてもらうこと。この酵素が大豆のたんぱく質をアミノ酸に、小麦のでんぷんをブドウ糖に分解してくれます。そのため、この工程の良し悪しが品質に与える影響度が高く、特に重要視されています。
製麹に人のサポートは欠かせない
製麹(せいぎく)ともよばれるこの工程は、蒸した大豆と炒った小麦を混ぜ合わせ、そこに種麹(たねこうじ)を加えて繁殖させます。ただ、麹菌は自らが成長する過程で熱を発するのですが、そのままにしておくと、その熱で死んでしまいます。
そのため、ここが醤油をつくる職人の腕の見せどころなのですが、麹菌の成長にあわせて温度の上げ下げの調整をします。温度が高すぎても低すぎてもだめ。定期的にほぐして空気を送りながら、麹の成長を見守ります。
* さらに詳しく → 醤油の麹づくり


③ 発酵・熟成
麹ができあがると、発酵させる容器(タンクや木桶)に移動させます。この作業を出麹(でこうじ)といい、その過程で塩水を混ぜ合わせます。この麹と塩水を混ぜたものが諸味(もろみ)です。最も長く時間を要するのがこの工程で、乳酸菌や酵母菌の活躍で醤油の特有の香りや味わいが生み出されます。
春夏秋冬の環境が大切
諸味の水分の多い味噌のような状態です。人工的に温度調節ができる環境では数か月~6ヵ月程度、四季の温度変化にゆだねる場合で1~2年をかけて熟成させます。その期間、職人は撹拌(かくはん)というかき混ぜる作業を継続して行い、微生物の働きをサポートします。
「寒仕込み」という言葉があるように、昔は冬の寒い時期に仕込みを行い、春から夏にかけて気温の上昇と共にとぷくぷくと音を立てる発酵が活発になり、秋から冬にかけて静かに熟成の時を過ごすのが基本的なサイクルです。この環境を人工的に制御することで年間を通して仕込みをすることができるようになっています。
* さらに詳しく → 醤油の諸味
* 醤油を味わう → 木桶仕込み醤油を試してみる(職人醤油ストア)


④ 圧搾
諸味を搾って「醤油」と「搾り粕」に分ける作業が圧搾工程です。日本酒と酒粕の関係をイメージいただくと分かりやすいと思います。諸味を布で包んで、それらを重ねてから圧力をかけることで搾っていきます。
手順は、大きな風呂敷に諸味を注ぎ、四方を折りたたむことで座布団状にします。それを重ねてから圧力をかけることで液体を分離させます。大手メーカーはこれを数百枚重ねて3階建ての建物ほどに高さにできたり、数百メートルの長い風呂敷に包む装置を使えるなどの違いはありますが、基本的な工程は同じです。
均等に何十段と重ねていく繊細な作業。しばらくすると醤油のしずくが滴り、よい香りが漂います。一気に搾りたい気持ちを抑えてゆっくりじっくりと。3日~7日程度時間をかける工程になります。
* さらに詳しく → 醤油を搾る(圧搾)

⑤ 火入れ
搾られた液体は生揚醤油(きあげしょうゆ)とよばれ、熱を加える火入れ工程を経て醤油になります。生揚醤油には乳酸菌や酵母菌などの微生物が生きている状態で、このままビンに詰めると発酵が続いてしまいます。そこで熱を加えて失活させます。
アミノカルボニル反応(メイラード反応)
そして、もう一つ火入れの重要な目的が、色を調えて醤油独特の香りづけをすることです。火香(ひが)をつけるとも表現をされます。焼き鳥をつくっている時の香りを想像いただくと分かりやすいと思いますが、アミノカルボニル反応やメイラード反応とよばれます。熱を加えることでアミノ酸と糖が反応して香ばしい風味が生まれます。
火入れ温度を1度単位で調整する職人がいたりと、繊細にコントロールをしている蔵元もあります。また、近年よく目にするようになってきた生(なま)醤油はマクロフィルターで微生物を除去し、火入れと同等の状態にしています。まれに蔵併設の売店で微生物の生きたままの生揚醤油の状態で販売をしていることがあります。
* さらに詳しく → 醤油の火入れ

⑥ ビン詰めをして完成
余計な雑菌などが入らないように細心の注意をして瓶詰め。ラベルを貼って完成です。機械によるオートメーションの場合も、最初から最後まで手作業で行っているところまで様々です。
ラベルもシールなのか紙をのりで貼っているかによる違いもありますが、これらの工程は女性が担っている蔵元が多いもの。ここで活躍する女性が元気だと、よい蔵元である場合が多いような気がしています。

醤油は6種類に分類されます
これまで見てきた醤油は濃口醤油のつくり方になります。この流れがベースになって、熟成期間の長短や、大豆・小麦の比率や量を変えることで6種類の醤油に分類することができます。そして、以下の写真の背景色、これ、醤油そのものの色です。透明のアクリル容器に醤油をうすく注いで写真にしたものを6種類並べています。

醤油の分類はワインに似ている
実はこれほどの違いがあるのも醤油の面白いところで、ワインの分類に煮ているように感じています。赤ワインと白ワインとで相性のよい食材や料理が異なるように、醤油も使い分けていただくと、食はもっと楽しくなると思います。ぜひ、個性豊かな醤油を試してみてください。醤油の見え方が変わると思います!