醤油の知識

079|小麦の処理

うちで醤油仕込みの時期が近づくと、
早めに始める作業があります。

それは、小麦を炒ること。

少量ずつ、竹箒で混ぜながらの地道な作業です。



で、実は今年はこれ、やりませんでした。

去年の夏、小麦の処理を委託でやってくださる食品会社さんに出会い、
お願いすることにしたのです。

と、簡単に言いましたが、お願いするに至るまで悩みました。
すべての作業を自分でやる。という事に重きを置いていたので、
委託に出すなんて… と。しかし、色々な理由が重なった状態だったので、
悩んだ末にお願いする事に決めました。

理由としては

● 釜で炒るのは時間がかかる。
 釜で炒る場合、一度の製麹に使う150kgをノンストップでやっても8時間かかる。
 トータル1800kgを2ヶ月の期間中に処理するための時間を、
 仕込み作業や普段の仕事と並行しながら捻出するのが、年々厳しくなっていった。

● 小麦の処理に使っていた場所が圧搾場になってしまったため、スペースが無くなった。

● 釜で炒る場合、ずっと手を止めずに回しているが、どうしても炒りムラができる。

● 委託先のメーカでは流動焙炒装置で処理してもらえる。
 α化度が高く、熱風で焙炒するので混砂式のように砂の混入がない
 うちは諸味や粕も商品にしているので重要

● 小麦の処理には立ち会わせてくれる。

もちろん、委託に出すので費用もかかりますが、
それでも上記の理由から委託に出す事にしたのでした。

さて、事情の説明はそんなところで。

新年明けての仕事始め、
今年の仕込みに使う小麦1800kgをトラックに乗せ原料処理へ行きました。
いつもは30kgの袋に入った状態で購入していますが、今回はフレコンです。



こんな形態で購入するなんて沢山使ってる風ですが、
たったの1800kgなので、2だけです。笑

ちなみに小麦は今年も、糸島産のチクゴイズミです。
ほんとは、もっとタンパク含量が高い品種を使いたいのですが、
産地を指定する場合はチクゴイズミしか買えないのです。



さて、下の機械が流動焙炒装置です。

こちらの工場では普段麦茶(大麦)や玄米茶の
玄米の熱処理にこの装置を使われているそうで、小麦は初めてとの事。

なので、小麦の膨化具合や色などを見ながら
条件を変えてもらって調整していきました。





これは、冷却機です。

原料投入 → 焙炒 → 冷却 → 袋詰(20kg)という流れでどんどん進んでいきます。

帰りは、小麦が膨化して体積が増えているのと、
袋詰めになった事で2tトラック山盛りになりました。
(写真がなくてすみません。)

しかし今まで何日も費やして苦労していた事が、1日で終わるとはなぁ…. 笑

今回、委託に出したというのは何だか後ろめたい感じもありますが、
処理された小麦の状態を見て、これならよりよい醤油を作れる。と、感じました!

みなさん、今年の仕込みもどうか暖かく見守ってください! 

城 慶典 (ミツル醤油醸造元)

1984年生まれの醤油職人。
高校生の時に自社での醤油醸造の復活を志して東京農業大学 醸造科学科に入学。入学後、「学校に通っているだけでは自分の求めるものは得られない。」ということに気づき、伝統的製法による醤油造りを続けられている醤油蔵を探し、卒業までに7つの醤油蔵で短期間の研修を受け入れて頂く。卒業後、岡本醤油醸造場にて一年間の研修。その後、JFCS(ジャパン・フードコーディネーター・スクール)で一年間学び2009年6月より、実家であるミツル醤油へ入社。2009年11月 夢である醤油造りの復活と、地元・糸島を全国に発信したい。という思いをリンクさせ具現化する、社内別ブランド「itosima terroir」(イトシマ テロワール)をスタート。

ミツル醤油醸造元