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柴沼醤油見学 その4

柴沼醤油の醤油蔵見学

もう一つの目的、柴沼醤油の醤油蔵見学。柴沼会長が自ら工場内を案内してくださいました。まずは先ほどの「辰巳蔵」の見学から。蔵の1階では木桶を下から間近に、2階では上から全体を見渡すように見学ができます。

1階に入ると、正面左手にどーんと構える巨大な木桶が目に飛び込んできました。 この木桶は、今からおよそ50年前、大手メーカーがステンレス製タンクへと切り替えを進める中で譲り受けたもの。容量は60石(1万リットル)、当時から状態が非常によく、50年以上経った今も変わらずきれいな姿を保っています。

「写真もどんどん撮ってOK。木桶も、ぜひ触ってみてください」そう語る柴沼会長の言葉に背中を押され、見学者たちは実際に木桶に手を添えながら、伝統の重みと温もりを体感していきます。整然と並ぶ木桶の間を歩きながら、様々な表情の木桶を眺めるのもまた一興。

「この木桶は少し漏れがあるけれど、今はあえて掃除せずそのままにしてるんだ。木桶職人さんにみてもらうためにね」そう語る柴沼会長の眼差しは、先人から受け継いだ桶を、これから先へも繋いでいこうという強い意志に満ちていました。

2階へ上がると、窓から差し込むやわらかな光が、蔵全体をふんわりと照らし出していました。 その静かな光景に包まれて、まず驚かされたのが、床板の美しさです。

ここで本当に醤油の攪拌や汲み出しが行われているのだろうか?思わずそう疑いたくなるほどに、床は整えられ、清潔に保たれていました。

「諸味の出し入れをする配管を多く設置しているので、人の移動が少なくて済むんです。それで床が汚れにくくなる。さらに、桶と桶の間隔も広く取って、掃除がしやすいようにしてあるんですよ」と、柴沼会長。その言葉に、なるほど、と深く頷くばかり。 実際に味わった柴沼醤油の澄んだ香りと凛とした味わいは、こうした丁寧な環境づくりから生まれているのだと、改めて感じさせられました。

とはいえ、木桶の中そのものは基本的に洗わないのだそうです。どうしてもというときでも、水ではなく、塩分を含む醤油で洗うのだとか。水で洗ってしまうと、木桶にとってはかえって腐敗の原因になってしまうためです。

見学はさらに進み、正面玄関を入ったところにある、江戸時代から続く母屋へ。


中に足を踏み入れた瞬間、まるで時代を超えて昔の世界へとタイムスリップしたかのようでした。

この日に見学に訪れた方たちの名前が映し出されたデジタルウェルカムボードでお出迎え。母屋の一角では、工場内での作業の様子を映像で見たり、柴沼醤油の歴史、そして海外への展開についても紹介していただきました。

柴沼醤油は、スイス、オランダ、中東など、現在約70ヶ国に輸出されています。

FSSC22000という国際規格も取得し、衛生管理・製造管理ともに世界基準の品質を実現。木桶仕込みの伝統を守りながらも、300リットル単位でプライベートブランドの味づくりができるなど、多様なニーズに応える柔軟さも備えています。

サイズ展開も豊富で、1.8リットルの家庭用から、刺身についてくる小さなフィルムパックサイズまで。海外のドン・キホーテ向けに開発された商品まであり、世界各地で“SHOYU”の魅力が広がっていることを実感しました。

続いて案内していただいたのは、もう一つの蔵「大新蔵」。「辰巳蔵」とあわせて、ここには全部で67本もの木桶が並んでいるそうです。

そして、ここで思わず感動してしまったできごとがありました。これまでにもいくつかの醤油蔵を見学してきましたが、「木桶に使われる材木」について、こんなに丁寧に教えていただいたのは初めてのこと。

柴沼会長は、木桶で醤油を仕込む伝統だけでなく、木桶の材料として使われる吉野杉の優れた特性についても知ってもらいたいという思いから、この吉野杉の見本を用意してくださったそうです。こちらはなんと、樹齢129年の吉野杉の見本。赤身と呼ばれる部分が、醤油や味噌の桶に使われるとのこと。木の断面を前に、「この部分はここに使われます」と、まるで職人の手元を見ているような細やかな解説に、思わず引き込まれました。

2階では原材料についての展示もあり、丸大豆と脱脂加工大豆の味比べも体験させていただきました。木桶で脱脂加工大豆を仕込むと、約6ヶ月で熟成するとのこと。「うま味が早く出る」と言われるその理由を、実際に味わいながら理解することができました。

見学の最後は圧搾場へ。ここでは自動の圧搾機によって諸味を搾ります。積み重なる重みは約70トン。さらに800トンのプレスによって、1日に12,000リットルもの生揚醤油を搾り出すそうです。

そして、搾りたての生揚醤油をひとくち。透き通った明るさをもつその醤油は、角がなく、まるみのあるやさしい味わいでした。

工場内を歩いていると、すれ違う多くの従業員の方がみな「こんにちは」と笑顔で挨拶してくださいます。

そのたびに、柴沼会長のもてなしの心が、現場のすみずみまでしっかりと根付いていることを感じずにはいられませんでした。

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