醤油のおいしさと効果効能
消臭効果
生臭さを消してくれる
マグロのお刺身を食べる時、醤油なしでそのまま食べることを想像してみてください。ちょっと嫌ですよね。刺身に醤油をつけるのは、味付けのためだけでなく、生臭さを消す目的もあります。醤油はたくさんの成分を有していますが、アミノ酸の一種であるメチオニンが変化したメチオールという成分に魚や肉の生臭みを消す作用があります。
加熱効果
焼き鳥のあの香り
焼き鳥や蒲焼などの食欲をそそるあの香り。その正体は、醤油に含まれるアミノ酸とブドウ糖が加熱されて起こるアミノカルボニル反応によるものです。煮物や照り焼きをするときに醤油にみりんを加えることも、みりんに含まれる糖を加えることでこの反応を促進させることにつながっています。メラノイジンという色素と香りの成分ができ、きれいな照りも出てくるのです。
静菌効果
雑菌から守ってくれる
醤油は適度な塩分やアルコール、有機酸などが含まれているため、大腸菌などの増殖を止めたり、死滅させる効果があります。この効果を利用したものが醤油漬や佃煮などで、生鮮食品も醤油で濃く味付けをすることで保存がきくようになります。
醤油には醤油の種類によって賞味期限が設定されていますが、醤油蔵にいくと10年以上たった諸味があることがあります。「出荷をするタイミングを失ってしまって・・・」という場合が多いのですが、味わい的には決しておいしいものではありませんが、口にして害のあるものでもありません。醤油そのものが雑菌から強い力で守られているわけです。
緩衝効果
おいしいpHに保ってくれる
食べ物をおいしく感じるのは、弱酸性(pH4~5)といわれています。醤油自体も弱酸性で、醤油を加えることでおいしく感じる弱酸性に近づける効果があります。アルカリ性であるこんにゃくや納豆、生卵に醤油をかけることで弱酸性に近づけたり、「何をかけたらいいか分からないけど、とにかく醤油をかけておけば大丈夫!」という場面もこの効果の一種だと思われます。
相乗効果
両方のよい部分がひきたつ
出汁をひく時、よく耳にするのが相乗効果。昆布に含まれるグルタミン酸、鰹節に含まれるイノシン酸、椎茸に含まれるグアニル酸。これらが一つだけの時より混ぜ合わせた時のほうが、両方の味がともに強められる現象です。
大きくグルタミン酸は「アミノ酸系」に、イノシン酸とグアニル酸は「核酸系」に分類されます。このアミノ酸系と核酸系の組み合わせが高い相乗効果になるといわれ、日本では鰹節と昆布の組み合わせ、海外では野菜(グルタミン酸)と肉類(イノシン酸)を組み合わせて料理をしてきました。
醤油に含まれるうま味成分はグルタミン酸が多く、そばつゆや天つゆがおいしく仕上がるのががよい例だと思います。
対比効果
スイカに塩の原理です
一方の味が強く、他方の味が弱い時、強い味がいっそう強く感じられるのが対比効果です。和菓子のあんこの隠し味に醤油を加えたり、煮豆の仕上げに少量の醤油を加えることで甘味を引き立てる現象です。お汁粉やスイカに塩をひとつまみかけるのも同じ効果で、アイスクリームに醤油をかけるとおいしいのもこの効果だと思われます。
抑制効果
塩辛さをやわらげてくれる
漬かりすぎた漬物や塩鮭など、塩辛いものに醤油をたらすと、塩辛さが抑えられ、まるみのある味わいになることがあります。これは醤油の中に含まれる乳酸や酢酸などの有機酸類に塩味をやわらげる力があるため。すっぱすぎる酢の物などに醤油を加えてマイルドにしたり、チャーハンの油っぽさを減少させるのもこの効果だと思われます。