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安い醤油と本格醤油は何が違うのか?

脱脂加工大豆だから悪いわけではない

安い醤油は原材料に脱脂加工大豆を使っていることが多いと思います。一方で、丸大豆醤油と書かれていると高級なイメージを感じると思います。ただ、脱脂加工大豆だから悪い醤油で、丸大豆だからよい醤油と決めつけることはできないと感じています。

脱脂加工大豆はイメージは悪いが、うま味の高い醤油に

脱脂加工大豆は大豆から油を搾った後のタンパク質を、醤油づくりに使えるように加工したものです。搾油する時にヘキサンという溶剤を使うので、それを敬遠する意見があるのは事実です。

ただ、醤油の生産者に「丸大豆と脱脂加工大豆を比較して、うま味(全窒素分)の高い醤油はどちらの方ができるか?」と質問すると、ほぼ100%で脱脂加工大豆と答えると思います。

産地と流通経路が明確な丸大豆。まろやかな味わいに

丸大豆は麹にしたときの出来栄えのよさや、大豆に含まれる油が醤油にまろやかさを与えるという声、そして、誰がどのような環境で生産した大豆かをしっかりと把握することができます。

特に桶仕込みをした時、諸味の上部に油が浮くことで、長期の熟成管理がしやすいという意見もあります。丸大豆だからよくて、脱脂加工大豆だから悪い、という判断ではなくて、生産者がどのような目的でその原料を選んでいるかが大切なように感じます。

アルコールが入っているから悪いわけではない。

原材料表示にアルコールが入っているから悪い醤油、というのも正しくないと思います。アルコールを添加する目的は白カビの防止なので、アルコールを使わずに、塩分濃度を高くすれば事足りるのです。

そもそも、白カビを防止するためには3つの要因があります。うま味が高いこと、塩分濃度が高いこと、そして、アルコール濃度が高いことです。どれか一つの要素が低い場合、他のどちらかを高めることでバランスを調整します。

塩分は低く抑えたいからアルコールを添加するケース

そのため、淡口醤油などうま味が少ない醤油の場合、塩分濃度を高めるか、アルコールを高めるかの判断になり、塩味は少なくしたいから醸造アルコールを添加することがあります。一方で、安価に製造するためにうま味を低く→アルコールを添加する場合もあります。

アルコールが入っている=悪いな醤油、ではなく、どのような目的で添加しているかが大切なように感じています。

うま味成分を調整している

多くの醤油は、搾った原液の醤油に塩水を加えて調整を行います。

うま味と塩分と色を調整することが主な目的ですが、シンプルに表現すると、加える塩水が少ないとうま味の高い醤油になり、加える塩水が多いとうま味は少なくなりますが量は増えます。そのため、安価な醤油はこのような調整をしてうま味を少なくしている場合が多いと思います。

特選醤油などの「特選」などの表記は、うま味成分を数値で定義したもので全窒素分の数値で測ります。全窒素分が多い=うま味が多いとなり、「特選」や「超特選」となのることができるのです。うま味の量をラベルから知る目安になると思います。

タンクと桶による個性

大手メーカーのタンクで大量につくられた醤油は悪いもので、伝統的な木桶で仕込んだものがよい醤油だという意見。これも、一概にそうだと断言できないと思います。

大手メーカーが目指すのは安定した品質の大量生産で、テストの点数でいうところの平均点をびしっと取ってくる醤油だと思います。一方で、木桶仕込み醤油はその蔵元の個性が大きく反映されます。しっかりとつくられたものは高得点になりますが、そうでなければ平均点以下にもなります。品質の振れ幅が大きいといえると思います。

使ってみないとわからない

ただ、その蔵元、さらにはその蔵に住み着く微生物にしかつくれない多様な味わいを感じることができるのも桶仕込みの魅力だと感じています。

料理人さんに試していただくと、合わせる素材や他の調味料、その方の好みによってもあの醤油が好き、この醤油が好きと評価は分かれます。そして、突き詰めていくほどに、醤油は面白い、醤油はおいしいとなっていただけると感じています。